Windgraphyチーム藤井 康隆YASUTAKA FUJII

新事業開発グループがKOAの中で担う役割や意義を教えてください。

藤井:新事業開発グループは、世の中の変化や流れからくる新たなニーズや課題を捉え、われわれKOAの基盤技術である厚膜・薄膜・金属などと組み合わせて新しいビジネスを作ることが役割になります。
われわれKOAはこれまで77年間の企業活動の中で、何度も経営危機があったのですが、その都度、会社の構造改革や社員の意識改革をして乗り超えてきた歴史があり、現在は変革の三段階目と位置付けています。
現状は既存事業の競争環境が非常に激しくなっているという中で、これまでと同じようにビジネスをしていては売上や利益が上げられなくなってくるという危機感をもっています。
そういった中でわれわれの想いに共感していただける共創パートナーと一緒に新しい価値を作り上げて世の中に提案していくことがわれわれの目指しているところであり、このような活動を通して、KOAの構造改革・意識改革を牽引していくというところがもうひとつの役割となります。

新事業開発グループを組織としてつくりあげる上で、大切にしてきたことはなんでしょうか。

藤井:新事業開発グループは2015年に、マネージャーの坪木が立ち上げた比較的若い組織になります。わたしは新事業開発グループの中の一つのテーマである「Windgraphy」を担当していますので、「Windgraphy」のチームづくりについてお話させていただきます。
Windgraphy」のチームは、社内外から専門性の高いスペシャリストが集まった技術者集団という特徴があります。
専門性やバックグラウンドの違いにより、議論がかみ合わなかったり発散したりすることが多くあるのですが、逆にそういった多様性が新しいアイディアを生みだすには大事であり、うまく融合できれば武器になると考えています。
その多様性を活かすためにも、チームメンバーは自由に意見を言い、人の意見に対して肯定もするし否定もするといった文化を築いてきています。
議論の場ではマネージャーとかリーダーとかそういった肩書は関係なく、自由に意見を言い、その中で意見をブラッシュアップしながら集約していくということを行っています。
誰もが未経験の新規市場を創造していく活動の中では、マネージャーもリーダーも関係ないと考えていて、自由に発言するというところは特に意識しています。
もうひとつ気を付けているのは、われわれが考えられるところは仮説までだということです。色々な製品やサービスは考えるんですけども、その良し悪しを判断するのはお客さまということを徹底しています。
製品仕様を検討しているとどちらがいいかという議論になります。技術的な実現性、コスト、リスクは比較検討しますが、体験の良し悪しの議論に発展したときは、お客さまに判断してもらうべきだよね、というところで議論を終えて検証に入ります。
このようにチーム内で自由に発言をして、多様性を活かした仮説づくりということを大切にしています。

Windgraphy」で実現する「共創」する未来とはどういったものなのでしょうか。

藤井:これまでいろいろなお客さまといろいろなお話しをさせていただきましたが、その中で「風センサ」というのは人々の「安心・安全」、「快適性」、「精神的な豊かさ」の向上につながるという大きな可能性を感じています。
気流というのは、危険な薬品やウィルスをばらまく媒体になったり、冷たい空気を部屋中に届ける媒体にもなりますが、その気流が目に見えないというところで実は人に危険性を与えていたり、快適性を阻害している可能性があります。
「風センサ」により気流を多点で測定したり可視化することによって「安心・安全」、「快適性」の向上に貢献できればと思っています。
また、「風センサ」は気流を可視化したり測定するような機能的価値だけではなく、感性的価値の部分として風を演出に取り入れたいというデザイナーの方にも非常に興味を持っていただいています。
プログラムされた演出は派手でインパクトが強いのですが、一方で風の自然のゆらぎを取り入れた演出は有機的で飽きのこない心地良さを感じることができ、「精神的な豊かさ」につながっていくものと考えています。
お客様は、彼らの製品や作品などを通して人々の快適性を向上したいとか笑顔にしたいなどの想いを持っていますがセンシングデバイスがなくて実現できていなかったり、既存の多点計測器は高すぎて購入できないなどの現実があります。
ですので、われわれはこのような想いをもったお客様との「共創」によって「安心・安全」、「快適性」の向上に貢献していきたいと思っています。

「新事業開発グループ」と「Windgraphy」にチームとしてかける想い、ビジョンを教えてください。

藤井:Windgraphy」はまだ事業開発中のものですので、まずはこの新しい事業を成立させることを第一歩と置いています。
昨今は製造が海外にシフトしたり、産業が都市部に集中していますが、そのような中でわれわれがこの日本でさらにこの伊那という地域で活動していることは、ここだからこそ生み出せる付加価値があると思っており、そこを追及しながら、まずは事業として成立させたいと思っています。
また、「Windgraphy」の共創活動を通して、われわれのもう一つの役割である、KOAの変革への第一歩となれればと思います。
具体的には、われわれはお客さまと共創しながら新しい価値を作り上げていくという本当に大きなチャレンジをしようとしていますが、このような活動や考え方が、KOAの既存ビジネスにも波及していって、KOAが目指しているところの提案型企業への変革に繋げていきたいと思っています。

リーダーという役割を担う中で感じる喜びや楽しさとはどんなものですか。

藤井:新事業開発は辛いこともありますが、楽しいこともいっぱいあります。「Windgraphy」は既存事業とは全く異なる事業特性であるため、マーケティングから設計・製造・販売・サービスのすべてに関わりながら体制を構築していきます。
わたしはもともとソフトウェアの技術者ですが、ソフトウェアという領域から、今はハードウェアとか機構を含めた製品全体をみたり、製品だけでなく製品を含めた事業をみることができます。
どのような製品を作るべきか、その製品をどうやって売るか、など、とても広範囲の業務に携わることは滅多にできない経験であり非常に面白いです。
また、新事業開発の中で、メンバーと話をする、議論をするというのは本当に楽しいことです。
仮説を作って検証するというのが基本的な業務となりますが、メンバーの意見を引き出し、アイディアをブラッシュアップし、筋が通った仮説が出来上がるととてもうれしくなります。
自分だけでは思考の広がりには限界がありますが、メンバーの思いもよらない発想や議論によって自分一人では到底たどり着けないようなアイディアが生まれてきたときは大きな喜びを感じます。

「新事業開発グループ」への期待感が生まれてきている中で、感じる喜びややりがい、未来にかける想いを教えてください。

藤井:Windgraphy」に対する経営の期待はすごく感じます。会社として変革しないといけないというところからスタートしていますのでプレッシャーは非常に大きいです。
とはいえ、経営は新事業開発の難しさを理解しており、結果を早く求めることはなく、むしろわれわれチームの方が早く結果をだしたいという想いが強いです。今は既存事業の収益に支えられてWindgraphyの共創活動を行っていますが、はやく自立して売上や利益で貢献していかないといけないと思っています。
一方で目先の利益に惑わされることなく、しっかりと地に足がついた活動を行い、今後のKOAが目指すべき提案型企業の形を作っていくことが大事ですので、いろいろプレッシャーはあるんですが、着実に成果を出しながら、認めてもらいながらやっていきたいと思います。

メンバーとはどういった議論で盛り上がりますか。

藤井:やっぱりみんな技術者なんですよね。ですので、製品のアイディアが思いついたら、どのような技術を使えば実現できるか、どうやったら効率がいいスマートな設計になるか、とか、技術的な話はすごい盛り上がりますね。
話はだんだん細部の詳細設計にまで及んでいきますが、難しい課題に直面するとそれを乗り越えるためのアイディアがでてきて解決策が見つかり、更に詳細を検討しては課題に直面しては解決策を探すのでエンドレスですね。

議論の末、失敗したときはそれをどうやって乗り越えていますか。また、トライアンドエラーの中でどんな想いを感じていますか。

藤井:仮説がいいかどうかは、結局はお客さまや市場が判断するものですから外れることもあります。仮説が当たるかどうかよりも検証して学びを得ることを重視していますので「外れてもいいじゃん」と考えています。ですので1回や2回の失敗ではめげません。
設計は仕様が決まっていて、その通りにつくるというところが基本なのですが、その辺が仮説検証は大きく異なります。そもそも設計仕様どうするかというところを試作品を通して世の中に問いながら決めていきます。
このような仮説検証活動のなかでは失敗(仮説が外れること)はつきものですが、その辺が最初はなかなか理解できず、仮説の成功確率を高めようとして仮説がいいか悪いか結論の出ない議論を延々としたこともありました。
世の中にある仮説検証のやり方を勉強するにつれて、仮説は検証するためにあり、当たっても外れても学びを得られたら成功と考えるようになりました。仮説検証を目的とした試作品は完成度にこだわって時間をかけるのではなく、簡単に素早く作ってみてお客様に評価していただいて、ダメなところは作り直せばいいし良いところは伸ばせばいいというふうにやっていけばいいと考えるようになりました。
この辺の考え方は「Windgraphy」のコンセプトにも繋がるところで、トライアンドエラー型の製品開発をしている方には、多点計測や分析に時間をかけるのではなく、気流が簡単に直観的に見える「Windgraphy」を使ってトライアンドエラーを素早く繰り返して早く改善結果にたどり着いていただきたいと思います。

新事業開発という活動を続けていく中での、チームメンバーへの想いを教えてください。

藤井:新事業開発は沢山の苦労があり失敗のリスクも高い業務ですが、ビジネスの全てを自分達で考えて進めていくことができる、とても貴重でやりがいのある仕事だと思っています。
メンバーにも同じことを感じてもらいたいと思っていますし、この貴重な機会を有効に使って欲しいと思っており、誰かの指示によって行動するのではく、自分の想いを仮説として形にして世の中に問うということを自分の意志で行って欲しいと思っています。
メンバーみんながそのような目的を持って行動できればきっと強いチームになりますし、ワクワクしながら楽しんで仕事ができるのではないかと思っております。

インタビュー実施日:2018年1月22日

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